Ryan Lovelace V-Bowl 9’3 は一味、いやかなり違う件@大貫

神経痛を患っていたあいだに左腕がすっかり衰えてしまっていたことを、前回の海の上で気づいてしまった。
出かける前に腕立ての一つくらいして確認しておけよ。って話なのですが、どれくらい腕力が足りていないのかが、海の上で試したことでかなりはっきりした。というか、はっきりと身につまされたおかげで、普段は絶対にしない筋トレなんてやるようになった。
筋トレと一緒に自宅でテイクオフの練習なんかもしちゃったりして、1ヶ月ほどでなんとかなりそうなところまで復調してきたので、そろそろ前回のリベンジのためにも海に行きたい。
夏休みの宿題は最終日にまとめてやるような、生来のズボラ人間の私をここまで奮い立たせたのは、前回ノリノリで持ち込んだ『Ryan Lovelace V-Bowl 9’3』に、ほとんどまともに乗ることができなかったから。
一日もはやくV-Bowlにキチンと乗ってみたい!

というわけで、それからほぼ1ヶ月が経過した、お騒がせの台風もまったく関係のない、いたっていつもの月曜日。
リハビリ気分の私は、むしろ台風スウェルとかに遭わないようにしたいので望むところ。
加えて9’3のロングボードなので、できるだけトロ厚い波を探したくなる。
となれば「悩み無用で大貫」となるのであります。

例によって前泊していたのですが、どういったわけか5時に目が覚めてしまった。
ここで二度寝を決め込むのがいつものお約束なのですが、まだ空いている海が気が気でなくなってきた。
“できるパパ”であるTくんは、夜明け前からこの海に入って8時前に家路につき、家庭サービスに勤しんでいる。
たまにはTくんの爪の垢でも煎じて飲んでみようと思い、眠い目を擦って準備をはじめることにした。

ほぼ無風。
波のサイズはヒザ〜モモ、たまのセットでハラという平和そのものの海。
何よりラインナップまで歩いて行こうと思えばいけてしまう、ビーチブレイクの気軽さが良い。さすがは大貫。
サイズはそれなりなものの、しっかりと波にはパワーがあり走り出しは力強い。
しかも、地形が良いようで、アウトを眺めていて「これくらいのタイミングで、ここで割れてくれるだろうな」という、きちんと想定できる場所で繰り返しブレイクしてくれるので、必ず捕まえられるgoodな波でもありました。

という波の具合で、この日の主役はV-Bowl。
こうした小ぶりな波でも反応してくれることは、すでにここ2回のデートで検証済み。
この日はもうちょっと仲を深めたい。

V-Bowlはご覧のようにそれなりにロッカーが効いている。
ロッカー強めのボードはホローな波を滑り降りる時にとても有用であることは分かっているのですが、その代わりに走り出しが悪いように思っていた・・・のですが、V-Bowlは9’3のロングボードなりに走りはじめは普通に速い。

ロッカーも効いているボードを「Piggy」と呼んでいいのか分かりませんが、PIG のようにボリュームゾーンはかなりテール寄り。
あくまでも私レベルの乗り手の話ではありますが、走り出しの速さは水面とぴったり張り付くような平らなボトムの長さと大きく関係すると思う。
その方程式に当てはめて、このV-Bowl 9’3を眺めると、お世辞にも平らとは言い難いハルボトムに加え、ロッカーが効いているぶん走り出しは悪いはずなのですが、ロッカーの後ろからが一番ワイデストの広い部分になることで、トップ部は走り出しにはほとんど関与しておらず、イメージとしてはロッカーぶんを差し引いた8フィートくらいのロッカー弱めのボードと同等の走り出しを持っている。ように私には思える。

V-Bowlの真骨頂は、トップからテールまで完全なハルボトムであるところ。
もちろんハルボードの例に違わずこちらのレールもしっかりとナイフィだ。
ただの聞きかじりでしかありませんが、高速艇の如き船底を持たされたハルボードの目的は、一にも二にも“スピード”にあるという。そして、得られるスピードの代償として扱いづらいという話もよく耳にする。
ここでも何度か言っておりますが、サーフボードでもスノーボードでも、スキーでも、そしてオートバイでも、「直進性」と「旋回性」という究極的に二律背反したものの、その双方のバランスのどこに着眼し、独自の発想を得るか。
シェイパーや設計者の意図を見極めることが、最高の相棒を見つける一番の近道にして王道だと私は思っている。
その定義で言うと、ハルボードは旋回性よりも直進性の方に重きを置いたボードということになる。
これまでにもいわゆるハルボードには何本か乗ってきましたが、そのどれもがテールにかけてコンベックスが緩められながら、ある程度の厚みを持たせて、手強いハルボードを手懐けようとしているものが多かった。
そうしたある意味、味が薄められたハルボードであっても、否、そうしたボードだったからなのか、私には今ひとつピンとは来なかった。
そんな私がV-Bowlに惹かれたのは、Ryan Lovelaceという人が、“新しい視点”を持っているシェイパーであるように感じられたからに他ならない。
彼ならきっと、他と同じハルボードは創らないはず。

V-Bowlがハルボトムを採用しているのはスピードのためだけじゃない。V-Bowlはヨー方向ではなく、ロール方向にスイングさせると超オモロイ。

自然とボードのロールを意識。っていうか、V-Bowlは自動的に乗り手がロールを楽しむように仕込まれている。
そもそもここまでサーフボードのロール回転を感じたことはない。もうそれだけで新鮮。
そのときに波のフェイスに食いついているのは確かにレールなのですが、足の裏に感じるのはエッジボードのような硬質な感触ではなく、ゆらゆらと面で波のフェイスを捉えている感触。
こう書くと不安定な印象を持つかもしれませんが、確かにガチッとした根の生えたような足応えはないものの、かといって操作が難しい感じはまったくしない。

あれだけ山なりにされたハルボトムなのに、不用意に抜けてしまうこともなく、レールが緩やかに波に架かっている。
しかも、波にレールの架かった状態を維持しながら、山なりのボトムに沿って水面はしっかりと捉えつづけられており、乗り手の足の裏にはボードが横方向にロール回転しながら進んで行く不思議な感覚だけが残るようになっている!
このゆらゆらと波を捉え続ける規格外に異次元な動きが超絶に気持ちいい!

そして、言ったように、簡単にロールするので、左右のレールの入れ替えがとてもしやすい!つまり、左右への連続のターンがしやすい!ハズ・・・
私にはキレのいいラウンドハウス・カットバックはできないので、これはあくまでもイメージでしないが、そんな私でも、このロール回転を活かせば簡単に逆側のレールに荷重を入れ替えられるので、V-Bowlであればスムースで緩やかな大人カッコイイ カットバックができるのではなかろうか。

そして何より、忘れてならないのが9’3という長さだ。
私の勝手なイメージだと7’5あたりがV-Bowlのレコメンドサイズのような気がしている。
なのに「V-Bowlは長い方がおもしろい」といった都市伝説のような話もあったりするからややこしい。
もしもその話が本当であるならば、7フィートあたりだとV-Bowlはハルボードっぽいピーキーな動きをするのかもしれない。
V-Bowlの反応が速すぎる部分を、レングス(もしくは重量)を増すことで中和しているということか。
そう考えれば尚のこと、9’3のV-Bowlなんてそうそうお目にかかれるシロモノではないので、物怖じせずに思い切って買ってよかった。と、あらためてシミジミ思う。
ただ、例によってそうした自身の想像の真偽のほどを確かめたく、8フィートあたりのV-Bowlにも乗ってみたくなる・・・Ellis Ericsonの時と同様に、再び沼にハマりそうで、それが怖い・・・もういい加減にしてほしい。

そんなわけで、小波の大貫をたらふく平らげることができた・・・
と言うのは半分嘘で、すぐに腕が上がらなくなってしまった前回とは違い、いい気になって乗りまくっていたら、1時間ほどで腕が回らなくなってしまい、ノーパドルで捕まえられる波にしか乗れなくなってしまった。
上半身をリフトアップする瞬発力は戻っても、パドル筋の方はまだ足りていない・・・もう九月だと言うのに・・・
早朝から始めたおかげ(?)で、8時前には大貫を後にしたのですが、確かにこれならこのあと仕事に行ったりもできる。若い頃にこれを知ってしまっていたら、それこそ身の破滅だったろうから、知らずに済んでラッキーだったな。

_ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ キリトリ線 _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _

さておき、毎度のことながら海のもつ癒し効果には驚かされる。
体の不調に加えて、いくつかのネガティブな出来事も重なっていたので、この日はよけいに海の持つ不思議な力を感じることができた。

サーフィンをしなくても、海に浸かっているだけで心も体も整うような気さえする。
そう思えるだけでも、海に来る価値はじゅうぶんにある。
またすぐに海に戻りたいのですが、今は自由に動くことのできない身なので、そうこうしているうちに雪が降り始めてしまいそう・・・

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