R18を手に入れてからずっと、磐梯吾妻スカイラインに走りに行きたいと思っていた。
磐梯吾妻スカイラインに行くなら、できればその先にある福島市あたりで一泊して晩酌にあずかりたいところなのですが、家の事情やら仕事やらの合間を縫って、しかも2日続けてある程度天気の良い日と合わせるとなると、なかなかタイミングが巡ってこない。
松本と白馬に一泊二日で行った時は、BMW Motorrad Daysの開催日に狙いを定めて、もし天気が悪ければ行かないという決め打ちだったので悩みは無用だったのですが、さまざまな要因の揃うタイミングを見計らうと、行ける時に思い切って行く以外になくなる。
磐梯吾妻スカイラインに行くことは、実は春先から狙っていたのですが、梅雨やら猛暑やらもあって結局天気の安定しやすい秋まで繰り越してしまっていた。
ここまで来ればいっそ紅葉を狙いたいとか欲深くなってしまうのですが、そんなことを言っているといつ行けるのか分からない。今年の天候不順を考えれば更にタイミングなんて訪れないし何より今の家の事情を考えればあってもワンチャンス。思い立ったが吉日だ。
甥っ子たちと海に行ったその翌日からの2日間、天気、家の事情、仕事と全てのカードが出揃った。
あとは私の気力次第。海に行った翌日から一泊二日のロングツーリングに行くのはまあまあシンドイのですが、次にカードが揃うのはいつになるのかを考えれば迷っている場合ではない。
意を決して磐梯吾妻スカイラインを目指し、朝8時に埼玉を出発した。

いきなり食い物の話でナンですが、こちらは那須高原SAで食べた鮎の塩焼き。
私は高速道路が嫌いだ。どういったわけか、中でも東北道が苦手。すぐに飽きてしまう。
そうした気分の私に、鮎の塩焼きは特効薬となってくれた。
近頃は道の駅や郊外のサービスエリアを目的地にしてドライブに出かける方もいるくらい、すでに休憩のためだけの場所ではなくなっているのですが、私はそうしたことに疎い。最初からこれがあると知っていれば退屈な東北道も少しは楽しめただろう。そして、見た目通りの美味でありました。こりゃあ今回の旅は幸先いいぜ。

東北自動車道を白河I.Cまで走り、そこからが旅の本番。
東北の街道はホントどこも素敵な道揃い。いきなり気分もアガる。


猪苗代湖に到着。水の透明度がとても高い。
奥に見えるのは磐梯山。ここからでも山肌に貼り付く猪苗代スキー場がよく見えるほどの快晴。
猪苗代には会社の連中を誘ってよく滑りに来ていたが、もう10年以上ご無沙汰。
理由は単純に遠いから。とはいえ距離的には白馬に行くのと大差ないのですが、苦手な東北道を使わないといけないことが猪苗代を余計に遠くに感じさせている要因。以前は白馬に行く時に使う上信越道も苦手でしたが、今はもう慣れてしまったので、それは思い込みでしかないこともよく分かっている。今年の冬は久しぶりに滑りに来てみようかな。
さておき、湖を縁取るように巡るこの道もまた気持ちの良い快走路。
くどいようだが福島の道はどこを走っても気持ちが良い。天気が良くて尚最高。


あっという間に磐梯山の麓まで来てしまった。もうすぐ刈り入れどきの黄金色の稲穂が揺れる景色に癒される。
ここまで来れば磐梯吾妻スカイラインはすぐそこ。
300km近く走った疲れよりも、もう着いてしまうことへのがっかり感の方が上回るのは、まさにBMWの魔力の成せる技だ。気持ち良い時間はあっという間に過ぎていく(高速道路区間は退屈でしたが)。


標高を上げ始めた頃に雲がかかりはじめ気温も一気に下がりはじめる。
標高が1,400mを超えたあたりから山の木々が色づき始めた。
装備は整えて来ているのですが、太陽の暖かさを感じられた猪苗代までとは気温が10℃近く違うので、なかなか身体が対応できない。
上の画像の奥の方に光って見えているのが猪苗代湖。あちらはこの時間も晴れている。


13時30分に浄土平に到着。
駐車場は多くの観光客のクルマやオートバイで埋まっていた。
R1200GSを手に入れて最初のロングツーリングがここだったので、ここに来るのはかれこれ20年ぶりということになる。R1200GSを買ったのはもう20年も前のことなのか・・・頭ではついこの間のように感じてしまう。歳はとりたくないものだ。


前回来たときは見てみぬふりを決め込んだ吾妻小富士ですが、今回は登ってみることにした。
登ると言っても階段路を10分ほど歩くだけなのですが、標高が1,700m近い場所なだけあって息も切れる。
ただ、歩いたら身体がかなり暖まった。オートバイを走らせても寒くなくなったのは良かった。
やはりオートバイは1mmの新陳代謝にもなってないんだな。

登ってみたのはただの気まぐれだったのですが「これを見逃すと後々もったいない思いをするぞ」と思わせるほど圧巻の景色を堪能することができました。たまには気まぐれも起こすもんだね。
吾妻小富士を含めこの一帯は活火山なので「噴火の際には建物内に避難せよ」とかしれッと看板に書かれていたりする。活火山だと思うとこの御釜状の火口の見え方が変わる。ホンモノは説得力が違う。
火口を歩いてぐるっと一周できる。きっとさらに別の光景を目の当たりにできるのでしょうが、それはまた次の機会にさせていただく。

浄土平から先のエリアは火山性ガスのため草津と同様に駐停車禁止。
「窓を閉めよ」とか看板に書いてあるがオートバイはどないすんねん。
さておき、ここから福島側は雲に覆われていることが分かる。
日帰りに変えることや、宿泊先を比較的天気予報の安定していた会津若松にすることも視野に入れて、この日の宿はまだ予約していない。
かなりアドレナリンが出ているので、すでに日帰りは選択肢にないが、ここで猪苗代に引き返して会津若松に宿を取り明日の行程を楽にするか。はたまた明日の磐梯吾妻スカイラインの天候回復を信じてこのまま福島まで北進し、明日またここを通って帰るか。

というわけで、15時30分。すっぽりと雲の中に入り込んだ、視界10m程度の真っ白い世界を走り抜けた先にある福島駅前まで一気に場面は進む。
やっぱり磐梯吾妻スカイラインを直進し、福島駅前に宿をとることにした。
ちなみに、磐梯吾妻スカイラインをただ真っ直ぐに走り続ければ自動的に福島駅西口に辿り着く。
アパホテルにしたのは大浴場がついているから。
松本の時と同様に地元の銭湯に浸かってみるのも良かったのですが、ホテルですぐに風呂上がりの缶ビールを煽る場面を想像をしてしまったら、検索画面で大浴場付きのチェックボックスにチェックを入れていた。
ここまで345kmを走破して来たのですが、あまりに道中が楽し過ぎてそれほど疲れを感じていない。
でもせっかくの大浴場なので活用させていただくことにしたのですが、なんとアパホテルにはアルコール類の自販機がない。しかも駅前なのに近くにコンビニもない。そのため風呂上がりのビールは諦めざるを得なかった。そうと知っていたらここに来る途中にあったコンビニで買っておいたのに。いったい何のための大浴場なのか。なんとも大浴場甲斐のないホテルだ。次から気をつけよう。


そんなわけで、いつものように街を散策する。
駅前でお祭りの山車を見かけ、Google先生にも聞かずに自慢の嗅覚だけを頼りに歩みを進めると、お祭りに行き着いた。ちょうどこの日まで開催される『福島稲荷神社 秋の例大祭』でありました。
出店が2〜300は軒を連ね、お化け屋敷も出るようなかなり大規模なお祭りでした。
この規模のお祭りに来るのは何十年ぶりだろう。
「まずは生ビール」と出店を探すがどこにも生ビールはおろか、缶ビールでさえ売られていない。
確かに子供たちが多く来ていたのでそれも仕方がないか。とも思うが、アルコールのないお祭りがあるなんて、まあまあのカルチャーショック。

というわけで多めの寄り道をしたが、無事に小粋な居酒屋さん『藤むら』を発見。なんとか生ビールに辿り着いた。
毎度そうなのですが、一人の時はネットで探したり予約もせずにぶらっと暖簾をくぐるのがへそ曲がり流。
おかげでずいぶん鼻が効くようになった。
一泊できるのであれば、山間に佇む古びた温泉宿なんかもいいけれど、美味いもんに出会えそうな地方都市をツーリングの目的地に選びたい。
すっかり一人旅や一人酒が板についてしまったが、侘び寂びを知る大人になれたことは素直に誇らしい。


まあこうした地方都市でハズすこともそうそうないのではありますが。
こちらでもとても美味しく地のものをいただくことができた。

近頃は「一人の時間が欲しい」とか、独り者の私からすれば大そうな贅沢を言う方が多いのだなと驚かされる。そうした方にこそオートバイをお勧めしたい。半強制的に一人にさせられます。しかも自己責任の塊。無事に家族の元に帰ることの責任の重さ、一人でいることの自由に伴う責任を痛感できます。ハナから言い訳無用の遊び。
この究極の贅沢は明日のことなんか考えられない子供には決して分からんだろうな。
なんて。いつ死んでもおかしくないような自暴自棄を繰り返してきたクソガキも、そんなことを言えるくらいの歳になるまでオートバイに乗り続けることができた。
あ〜〜〜シアワセ。
(復路につづく)
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