せっかく雪のあるうちに新しい玩具を手に入れることができたのだから試さない手はない。
届くなりダリング〜ビベリングとエッジのプレチューンを自身の手で施し、ベース〜滑走ワックスまで一気に済ませて、ゴールデンウィーク前の木曜の夜に奥只見を目指して埼玉を出発した。

奥只見シルバーラインは18〜6時まで通行止めのため、麓の道の駅で車中泊して6時起きで奥只見丸山スキー場に向かった。「平日だし楽勝でしょ」と、鼻歌混じりで向かうと、すでに第1駐車場は満車。
ゲレンデに一番近い第1駐車場は休日は有料なのですが、平日は無料となるので、これにはかなりがっかり。泣く泣く一つ下にあるいつもの第2駐車場に停めることにした。
「平日なのにすごい人気だな。さすがは春の奥只見」とか思いながらリフト券売り場に着くと、スパイダーマンのごときピッチピチのウェアに身を包んだ大勢のスキーヤーで賑わっていた。

この日はスキーのスラローム競技会が催されていたため、出場者の方々で第1駐車場が埋まってしまったようだ。

というわけで、競技会場になっているコース以外はガラガラ。
ただ、このスキー場で一番美味しい(と、私は思っている)『カモシカA』が競技会場となってしまっているのは、第1駐車場に停められなかったことと同じくらい悔しい。
この翌日にはスノーボードの試乗会が開催されることは知っていたのでそこは避け、この前日まで雨が降っていたのでピンポイントでこの日しかなかったので、この日しかなかったのは仕方のないことなのですが、それでも悔しい。


第2ペアリフトを2本回し、丸山ゲレンデの2本目には、ストラクチャーの入れられていない滑走面はすでに汚れで滑らなくなってしまった。ただこれは、期待通りでもない代わりに期待はずれでもなく、想像通り、例年通りの奥只見の雪だ。ここ数日は黄砂が飛来して来ていたので、その影響は少なからずあったのかもしれないが、それも含みでいつも通りとも言える。

といった状況説明を経て、本題の『IMPOSSIBLE 26y Model』であります。
カラマツヒノキは、ノーマルコアと比べて、フレックスに違いがあるものと思っていたのですが、フレックスに関して両者はほぼ同等であることが、今回実際に乗ってみてよりはっきりとしました。
ただ、実はカラマツヒノキがフラットキャンバーであったことが発覚し、確認すべきはフレックスの違いではなく、キャンバーの違いについて。
結論から先に申し上げますと、
ノーマルIMPOSSIBLEの乗り味は、
そのまんまキャンバーボードのものでありました。
カラマツヒノキとノーマルとで、フレックスはほとんど同じなのですが、キャンバーがないぶんカラマツヒノキの方が踏み込んだ時のボードのしなりが速い。
対してノーマルは、キャンバーが潰れてしなり始めるまで一拍ある。
その一拍の間にサイドカーブが吸い込まれていくようにターンが開始される。
兎にも角にもキャンバーボードはターンのきっかけが掴みやすい。
春雪の面倒な雪質ではこちらの設えの方が断然合っている。
フラットキャンバーだったカタマツヒノキにしても、めんどくさかったり、ややこしかったりする雪質に於いて、直進性と操作性という二律背反する特性のバランスの良さは圧倒的に感じられていたので、そこにキャンバーのメリハリのある操作性が加わるのだから、バックカントリーを含む千変万化する斜面ではまさに鬼に金棒の存在となるだろう。

ノーマルで2時間ほど滑ったところでカラマツヒノキに乗り換えた。
では、キャンバーのあるIMPOSSIBLEの方が正解なのか?
と言うと、そうとも言い切れないところが
フラットキャンバーの奥ゆかしさ。
ノーマルを操ったあとでカラマツヒノキをターンさせると、はじめてカラマツヒノキに乗った時に感じた、前後荷重の位置を探らないと上手にターンさせることができない印象が、フラッシュバックするように思い起こされた。
ノーマルではむしろトップ付近の反応が良すぎるくらいに感じられ「エッジチューンで整えないとなあ」と感じるほど切り返しが速く、ターン入口の反応の仕方が違った。
ただそれも最初の2ターンだけで、そのあとはこれまで通りの操作性が蘇ってくれたのですが、これがまさにキャンバーのあるなしが顕す違いだと思う。

フラットキャンバーのヌケの良い
テールの動きがとにかく気持ちいい。
あくまでも比較した際に感じる程度の違いではありますが、キャンバーがあると、ある程度ターンの仕方が決められてしまうように感じる。
その点フラットキャンバーは、ターンの入口できっかけが掴みづらい代わりに、ターンの中盤以降は自由自在にターンを仕立てることができる。それが逆に不安定さを感じさせてしまい、この自由さ加減が肌に合わない方もいるだろう。
私はエッジレスのボードには乗ったことがないので、その乗り味は想像する他ないのですが、こうしたフラットキャンバーのヌケ感と通じるものがあるのではないだろうか。
これが私が感じていた186cmという長さを全く感じさせない操作性の高さの源泉。そして何より、TTとの共通性を強く感じさせていた部分に他ならない。
誤解のないよう言っておきますと、キャンバーを持つノーマルのIMPOSSIBLEでも、186という数字から想像させるような長さは感じさせない操作性を持っておりますが、フラットキャンバーになるとその性格がより顕著になるという意味です。
5年前の白馬岩岳で、Quetaroさんにお借りして、コース2本だけIMPOSSIBLEで滑らせていただいたことがあるのですが、その時の感想が「SPEEDMASTERと同じに感じる」でありました。
今回の感想もそのときの感覚にかなり近く、SPEEDMASTERとの類似性を強く感じた。
しかも、その時は『TT165 Softflex』からの乗り換えだったので、余計にTTとIMPOSSIBLEとで似ているところがあるなどとは微塵も感じられなかった。
これはSPEEDMASTERに近しい乗り味が悪いという意味では決してなく、ノーマルのIMPOSSIBLEを先に手に入れていたら、ここまでIMPOSSIBLEを理解できてはいなかったかもしれない。という話。
私はやはり、フラットキャンバーに苦手意識を持ちながらも、そこに抗えない魅力を強く感じている。
操作性の塊のようなIMPOSSIBLEという“器”によって、フラットキャンバーの特性を中和することの意義は、フラットキャンバーに通じている方なら、もう言わなくてもお分かりだろう。
IMPOSSIBLE ×フラットキャンバー=扱いやすいフラットキャンバーという、私にとってほとんど夢のようなコラボレーションが、奇しくも達成されている。
“フラットキャンバーになってしまったIMPOSSIBLE”は、GENTEMSTICKも意図しないところで、何なら不良品のレッテルを貼られても仕方のないものだと思う。
これはかなり偶発的な出来事だと思われますが、もしかすると構造的には極めて不利な長さをもつIPOSSIBLEは、経年変化を経ると押し並べてフラットキャンバーになってしまうのかもしれない。
いずれにせよ、個人的にはとてもおもしろいことになってくれた。

私を“ダブルピンテールマニア”にまでしてくれた、IMPOSSIBLEのピンテールの乗り味は、カラマツヒノキ独自のものであることも見えて来た。
ノーマルもトップシーズンのコンディションの良い斜面でも確認しないと結論は出せませんが、あの独特なピンテールのしなり方、しなったところから「ぱーんっ」と元の形状へ復元していく感触は、フラットキャンバーであるカラマツヒノキならではの反応の仕方なのかもしれない。
今回、バインディングの付け替えが容易な『Karakoram Prime-X』ではなく、『BURTON GENESIS』を装着して来たのは、少なからずこの可能性を感じていたから。
硬いPrime-Xだと、カラマツヒノキがボードセンターから反応してしまい、そうしたテールのしなやかさが薄れて感じられてしまうところ、ミドルフレックスのGENESISならば、足下で溜めた荷重を一気にテールで解放させることができ、よりテールの反発感を感じることができる。
ただ、先日の至仏山でPrime-XでMAGIC38に乗ってみて、レスポンスに優れるキャンバーボードには硬いバインディングの方が合っていることを再確認したので、ノーマルをPrime-Xでも試してみなければならないだろう。


話を奥只見に戻そう。
丸山ゲレンデの『Snow Park 秘境園』は朝のうちは閉鎖されていたので、その脇の細いコースを滑らざるを得なかった。短いコースなのですが、斜度がカービングに程よく私は好きなので、ここも広く滑らせて欲しいトコロ。

そのあと秘境園がオープンしたので滑りましたが、この頃にはもう滑走面はベットベトで全く走らない。
他の皆さんはここに焦点を当ててワキシングを施しているようで、引っ掛かりも少なく、加速を活かして強めに壁に当て込まれておりましたが、私は立体地形も舐めるように滑るので精一杯。


あきらめてここでスクレーピングして汚れを落としてからKashiwaxの『Black Snow』を入れることにした。
おかげで緩斜面が多く、途中で止まりがちになる『カモシカC』も、すんなりと滑り切ることができたのですが、やはり速度は通常の7がけ程度。
それが楽しいかと問われれば決して楽しくはない。せっかく奥只見まで来たので一本くらいは滑っておこうと思い出づくりに滑っただけだ。なのでカモシカCはこれでご馳走様。



そのあとは、斜度があるためストップスノーに負けずに加速させることができるカモシカA〜Bを、ひたすら回し続けることにした。

とはいえ、すでにターンを楽しめるのはカモシカAだけ。そのカモシカAも言ったようにポールバーンに幅寄せされ、ほとんど連絡コースのようになっていたので、3本も滑る頃にはすっかり飽きてしまった。
まあ、春に滑るってのはこういうことだ。お天道さんの下、滑れるだけでめっけもん。
何より、今回はIMPOSSIBLEの乗り比べが本題。それを果たすことができたので目的は達成だ。

そうして13時に上がることにした。
一応、奥只見ダムを眺めてみたりする。

この日は最初からへぎそばを食べることは折り込み済みの決定事項。
いつも行っていた『中野屋 塩沢店』は別の蕎麦屋に変わってしまっており、仕方がないので湯沢駅前の本店にやって来た。聞けば塩沢店は、そこで働いていた職人さんたちが引き継いで別の屋号になったのだそう。まだへぎそばが食べられるそうなので、また今度そちらにも行ってみよう。
この週末で今シーズンは〆ようと思い、実はこの翌日もかぐらを滑って帰ろうか、とも思っていたのですが、この雪質で駐車場1,500円とか言われてすっかりやる気を削がれてしまった。
とか言うのは半分嘘で、金曜でもかぐらの駐車場に多くのクルマが停まっているのを見て、土曜日は尚のこと混むだろうと思ったら、すっかり滑走欲が減退してしまった。
かぐらスキー場の前を通り過ぎ、三国トンネルを越えてそのまま帰ることにした。
というわけで、なんとも中途半端なシーズンの〆め方になってしまいそうだ。
う〜〜ん。雪はだいぶ少ないけれどゴールデンウィークも滑りに行っておくかあ??


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