バービー

Barbie/バービー』を単なる子供だましの映画だと思ってはいけない。
内容はかなりシリアスで、観る者にかなり考えさせる、“超”課題型、もしくは“超”提案型の映画。

これはあくまでも私の偏った考え方ですのでサラッと聞き逃していただいて構わないのですが、“多様性”ってマイノリティの方々への手厚い配慮に関しては議論が尽くされているように思えるのですが、この時代だからこそ必要となるマジョリティへのサポートはまったく足りていない気がする。
LGBTQへの理解や関心が高まるその裏側で、多様性の時代における「女性らしさってナニ?」「男らしさってナニ?」「自分らしさってナニ?」ということへの示唆は、あまりに少ないと思う。

もちろん私のような昭和コンセプトでガチガチに固められた頑固者にはまったくその示唆は必要がなく、むしろ必死でマイノリティの人たちことを学ばなければいけない柔軟性が求められるわけですが、良い意味でも悪い意味でも「時代のコンセンサスのない人々」にとって、女と男というマジョリティな性的ポジションで、今という時代を生きるためのアドバイスや道筋って、与えられていないように思う。

『バービー』は、そうした今を生きる現代人の悩みや苦しみを映像化しているように私には見えた。

全米では同時期に公開された『オッペンハイマー』と『バービー』の2作品を鑑賞できる「バーベンハイマー」という鑑賞チケットが人気を博したそうで、『バービー』の配給元であるワーナーブラザースは原爆を想起させるキノコ雲とバービーを合成した画像をSNS上に投稿し、それに対してワーナーの日本法人が懸念表明するという珍しい事態に発展した。
そのことの是非はさておき「社会問題を扱うお堅い作品と、カラッカラに軽い子供向けのコメディ作品とを抱き合わせにして、それが功を奏すなんてアメリカって国はホントどうかしてる」とか、私は思ったのですが、実際に今作を観て考えを改めた。

『バービー』もまた『オッペンハイマー』同様に、社会問題を提起する作品でありました。
完全に裏をかかれた。
本来こういった宣伝から受けるイメージと内容に乖離があった場合、ヒットしないのが原則だと私は思っていたのですが、『バービー』は予想に反してワーナー・ブラザース史上最大のヒット作となった。

あの頃遊んだ人形のキャラクターの世界観が実写化されたような映画かと思って劇場に足を運んだら、多様性が叫ばれる社会に対して、ちょっとキツめの風刺やウィットに富んだ気づきのある問題的作だった

つまり、勘違いさせて劇場に足を運ばせる、それも計算だったというわけだ。

というわけで、『バービー』というネーミングや、きらびやかでバカバカしいほどにあっけらかんとした世界感から感じるものとは180°違って、内容はかなり辛辣で、場合によっては観る者の胸やら耳やらが痛む気づき系の作品でありました。
企業のリーダー候補の方とかが観たら、意外と自身のビジネスに役立ったりもしちゃうのではなかろうか。

(オススメ度:60)

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