【25-26シーズンの答え合わせ】Karakoram PRIME-X

そもそもスプリットボード用バインディングは、2枚に割られたスノーボードを結合させて滑走させるだけの剛性を確保する役目を第一義に考えられている。
そのために、スプリット用のバインディングは、ソリッドボード用の一般的なプラスチック(樹脂)製のバインディングよりもずっと硬くできている。
ソリッドボードを割ってスプリットボードにしたものはその限りではありませんが、私の知る限り、そもそもスプリットボードとして製造されたものは、スプリットさせた状態での剛性を確保するために、あらかじめフレックスを増して製造されていると思う。
つまり、SPARK R&Dでも、Karakoramにしても、スチールボディを多用しながらハードフレックスなスプリットボードに対応できるだけの高い剛性感、滑走に際しては硬いフレックスを持たされている。

そうした成り立ちを持つスプリット用のバインディングを、硬軟さまざまなフレックスが存在するソリッドボード用としても販売するKarakoramの姿勢には少なくない疑問が残る。
そして、GentemstickがKarakoramを純正指定していることにも疑心暗鬼にならざるを得なかった。

『K2 TT Snowsurfer』という柔らかいブーツを用意しておきながら、硬いスプリットボード用のバインディングをソリッドボードにも推奨するとはどうしたことか??
そもそもGentemstickは足下の反応が豊かな『BURTON GENESIS TT』というシグネチャーモデルを出していたのに??
それとも、Gentemstick自体と、そのファウンダーでありシェイパーである玉井太朗氏の活動とは、ベツモノだと位置付けられているのか??

Karakoramをスプリットボード専用だと割り切って使うとしても、ちょっとした問題が大きな問題に発展しかねない山の道具として見たとき、故障の原因になりかねない複雑な構造をわざわざ採っているのは、あまり褒められたことではない。
もちろんスキー場なら故障してもいいのか?と言えば、いいわけない。

という偏狭な理由を盾に、これまでKarakoramからは距離を置いてきた。

それから幾年月。
「『IMPOSSIBLE カラマツヒノキ』をバックカントリーエリアで滑らせたい」という願望が芽生え、素直にスノシューで登れば済むところ、少しでもハイクでラクをしたいと考える私は、以前から興味のあった『UNION ROVER』というクライミングスキンを装備するスノーシュー型のミニスキーを手に入れた。
ROVERは、滑走時も同じバインディングを使うスプリットボード用のバインディングを用意する必要があり、改めてSPARK R&Dで、ソリッドボードでの滑走テストを行ったものの、あまり良い感触を得られなかった。
そこでいよいよKarakoramを試してみる決意を固めることとなった。

「そうは言っても、一度使ってスプリットボード専用というオチもあり得る」とか思いながら、白馬栂池に持ち込んだのですが、これまでの思い込みや考えすぎが、杞憂であったことが最初のワンターンで判明する。
SPARK R&Dでソリッドボードを滑らせた時に、ボードとバインディングに一体感を感じることができなかった、あの感覚は PRIME-Xにはなく、むしろ『UNION FORCE』を感じさせるとても自然な感触を持っていた。
『BURTRON GENESIS』に比べてバインディグのフレックスが上がったことで、カラマツヒノキに感じていた、あのピンテール独特のスラッシュ感は薄れてしまったものの、レスポンスに優れるぶん操作性が上がったことで、ピンテールを弾くような滑り方よりも、それより手前のサイドカーブのトーションを活かす滑り方がよりしやすくなった。

そうした特性を生み出しているのは、スチール製の骨格とベースとをネジによって結合することで、結合部に生まれる“ズレ”や“歪み”をあらかじめ織り込んだフレックスだけでなく、そうして生まれたレスポンス特性をより明瞭に乗り手に伝える、ボードとの接地面を四隅に配置した構造にあると思う。
SPARK R&Dにしても、硬いスプリットボードで使用するぶんには、この狭い範囲で固定させる構造によって、Karakoramよりもバインディングの左右方向(ボードの縦方向)の撓みを促しやすくなっており、高剛性なバインディングによる高いレスポンスに加えて、高い操作性を持っていることは、SPARK R&Dの名誉のためにも申し上げておきます。

そして、前側の両サイドをフックで留めて、後ろ側をトリガーで支えて固定する、このKarakoram独自のインターフェースとの結合の仕方によって、上記の4つの接地点で常にガッチリとボードに根を生やすのではなく、4支点それぞれに荷重を移動させられる設計も、ソリッドボードでの使用にとても向いている。
バインディング本体の歪みを許容する構造と、インターフェースの固定部分の可動域によって、本来ガチガチになってしまうはずのこの高剛性なスプリットボード用バインディングを、一般的なソリッドボード用のバインディングに近い乗り心地を実現しているのには、私が疑い続けていた複雑な構造にこそ理由があった。

とはいえ、それはあくまでも硬めのフレックスを持ったボードに限る話だと今も思う。
私のクイーバーで言えば、IMPOSSIBLE、SPEEDMASTER、MAXFORCE、TT168 ミズメヒノキ、KORUASHAPES APOLLOで使用するぶんには問題はないが、TT165 Softflex、そしてMOSS Q57では、もちろん使えなくはないが、使ってもボードが本来持つ美味しいところを引き出すことができないように思う。
使うボードを選ぶバインディングであることは、PRIME-Xだけでなく、同じ構造を採るKarakoramのどのモデルに対しても言えることだと思われ、つまりKarakoramは基本ハードフレックス・バインディング専業メーカーなのではないかとすら疑っています。まあこれは完全に余計なお世話なんですけど・・・

Karakoramがわざわざ複雑な構造を採用しいる理由は先述した通りですが、その代償として、撓みや軋むような動きを許容する結合部の動きに釣られて、各パーツを固定しているネジも緩んでしまうことを意味している。
この設定によって、ほぼメンテナンスフリーと言っていい一般的なソリッドボード用のバインディングに対し、多数あるネジの増し締めなど、普段からのチェックはより重要となる。
加えて、採用されるプラスチックパーツには、決して褒められたものではない品質も散見されるため、不具合を事前に防ぐ意味でも気になる部分は信頼できるブランドのものに交換しておくことをお勧めしておきたい。

というように、Karakoramには、“箱から出してあとは壊れるまで使う”といった、これまでのバインデングの常識は残念ながら通用しない。
そうした手のかかるプロダクトを、誰彼なく提供することには、いまだに違和感が拭えませんが、私のような輩、というか機械フェチにとって、そんなKarakoramの手のかかるところがむしろ愛おしく感じられてしまうまでになってしまった。

ハイクモードに関して言えば、ヒールリフターが使いづらいことと、そのヒールリフターを上げた時の純正クランポンの頼りなさを除けば、何の不具合も違和感も感じない。残念なくらい至って普通の使い勝手。
繰り返すが、SPARK R&Dとの違いはソリッドボードでの操作感以外にはない。
むしろ、スプリットボードでの使用に限定するならば、今でもSPARK R&Dの方に分があるとすら思っている。
ソリッドボードとスプリットボードを分けて考えるぶんには、Karakoramは必要がないと私は思う。

実際に手に入れるまで、一番の心配の種だった、特殊なトリガーシステムに関しても、想像していた以上に堅牢で確実な結合感を持っていることが分かった。
そうなるとレバーを操作して取り着け取り外しできることが、逆に楽しくなってきてしまった。

ただ、繰り返し言っているように、構造が複雑になるぶん、比例して問題が発生する確率も高くなることは間違いのないところ。
たとえば、ベースとヒールカップを結合するネジが緩むと、結合部の前後長が変わってしまうため、場合によってはインターフェースに入らなくなるか、もしくは結合が緩くなってしまう。
そうした山中で出遭うバインディングの不具合や故障に際して、登行や滑走の技術でカバーできるように準備しておくことはもちろん、慌てず確実な対処ができるように日頃からメンテナンスをこなすなどして、構造を深く理解しておくことがとても重要になることは覚えておいていただきたい。
もちろんスキー場であっても、もしもバインディングが壊れたら、楽しいはずの一日が台無しになってしまうだけでなく、危険であることは言うまでもない。
ゲレンデでソリッドボードで使う場合においても、最低でも一年に一度程度のチェックは心がけるべきだと私は思う。

というように、使用に際しては、決して少なくない課題があること、そしてKarakoramのもつ有用性は、ソリッドボードとスプリットボードとで共用してはじめて最大化することなど、予め織り込んでおくべきことも少なくない。
ただ、そうと分かった今でさえ、PRIME-Xにはそうした懸念や疑念を超える、モノとしての魅力があると知った。
中でもバインディングを単体で持った時の軽さには、そのときの手に残る感触に毎度感じ入ってしまうほど気に入っている。
もちろん、インターフェースが分割されるので、そのぶん余計に軽く感じているだけで、滑走時にはソリッドボード用のバインディングとほとんど同じ重量となるのですが、そうと分かっていても、軽量で堅牢な先端素材を活かす、精密な製造工程を経て作り込まれたこの構造の有用性を強く感じてしまう。

というように、PRIME-Xはすっかりお気に入りのバインディンとなってしまった。
返す返すも食わず嫌いは何の得にもならないこと、使ってみて初めて解ることがいかに多いのか、ということを改めて痛感させられた。

言ったようにKarakoramがボードを選ぶことに変わりはない。
これからもフレックスを含む個々のボードの特性や遊び方に合わせて、BURTONやUNIONと使い分けていこうと思う。
もちろんスプリットボードとミズメヒノキだったり、ミズメヒノキとノーマルのIMPOSSIBLEを山に持っていくときなど、インターフェースを使い分けることで、持っていくバインディングを省略できるスマートな使い方ができるところはKarakoramの最大の魅力。そうしたメリットは積極的に活用していきたいと思う。

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